取材・文:秦理絵 撮影:ヤマダマサヒロ


感覚ピエロがロックバンドである意味を再定義する新曲「HIBANA」。 

 
<僕らはまるで 瞬く火花>――そんなふうに歌われる感覚ピエロの最新曲「HIBANA」は、作詞を手がけた秋月琢登(Gt)が初めてバンド自身のことを描いた楽曲だ。荒々しく、強い推進力を持って駆け抜けていくリズム隊のグルーヴのなかで、バンドが存在する意味を晴れやかに伝える。人気ゲーム「テイルズ オブ アライズ」オープニングテーマとして、構想から3年越しに世に出ることになった今作は、どんなふうに生まれたのか。それを紐解くために、以下のインタビューでは、コロナ禍に抱いた不安、ライブの変化、ロックバンドとしての自覚、横山直弘(Vo)の覚醒など、様々な角度で話を訊いたが、そのすべてがバンドのいまにつながっていることがわかると思う。
 

「これから」というときに直面したコロナ禍の混乱


――
まずはざっくりとコロナ以降の感覚ピエロみたいなところを振り返りたいんですけど。

 
秋月:2019年に幕張(メッセのワンマンライブ)が終わって。(2020年の)1月から3月まではお世話になってたライブハウスをまわるツアーを組んでたんです。そのライブが3月に全部が飛び。そこからですね。そのときは、「56月にはまたライブできるやろう」って。
健太:言っとったな。
秋月:「延期ですけど、また改めてまわります」みたいな発表をしてたんですけど。気づいたら、そこも、「あれ?無理じゃね?」って。もう(先のことが)わからんすぎて、去年はツアーを組むのはやめようっていう感じでしたね。  
 
――この状況でいろいろなバンドが大変な想いをしてるけど、特に感覚ピエロの場合、自分たちで会社を動かしていく大変さはあったんじゃないかなと思うんです。  
 
秋月:そうですねぇ……それは本当に、そうです(笑)。
一同:あはははは!
秋月:落ち込むレベルでそうです。
健太:まぁまぁ、せやな。
秋月:リアルな話をすると、もともとエイベックスとエー・チームとうちの3社の業務提携みたいなかたちでやってたんです。それが、幕張が終わったあとに2社から改めて株も戻して、完全に独立体系になったところやったし。あと、俺ら東京に出てきたところやったんですよね。  
 
――感覚ピエロが新しい動きをしようっていうところでのコロナだったと。  
 
秋月:そうですね。俺らの武者修行タイムというか。次のステップにいくための本数にして、昔の曲も大事にしようっていうコンセプトでまわっていく。すごくいい年やったし、モチベーションもすごいよくなってたのが折られたっていう。それは世知辛いというか。ま、でも俺らだけじゃないからね。他のバンドさんとか、他の仕事の方もいろいろあるやろうから。こればっかりは何も言うてられへん。  
 
――エイベックスとの業務提携はもともと期間を決めていたんですか?  
 
秋月:いや、もともと3年でやめてようっていうのは決めてなかったんですよ。メジャーさんと一緒に仕事をしてみて、僕らのスタイルを改めて考えたんです。もっとスピード重視というか、やりたいことを瞬時にできるかたちでやれたらなっていうのがあって。幕張がいい区切りでしたね。あれ(幕張)はたぶん僕らだけやったら絶対できなかったんで。そこは2社に感謝してます。  
 
――コロナ禍になって、これからどうしていくかっていうのを4人で話し合ったんですか?  
 
横山:どうしたってライブができないし。柱が1個なくなってる状態だから、それまでとはやれることが少なくなっちゃってるわけじゃないですか。そういうなかで新しいことをどうやってやっていこうか、みたいなディスカッションもなくはなかったけど。辛抱してる感じが強かったような気がします。そのなかで曲を作り続けることだったり、無観客の配信ライブをやったりして。  
 
――むしろそれしかできなかったんですね。  
 
横山:そう。耐えて、耐えて、もがいて、もがいて、みたいな感じだったなと思います。
秋月:あとあれよね、曲を出すにも、正直、時間はあるんすけど、なんか書けんというか。あんまり書きたいことが出てこん。
健太:家にずっとおるしな。
秋月:逆に「感染源」(2020313日にMV公開)とかは、まだ世間もコロナが何かが明確じゃなくて、わからんけど、ヤバい。やけど、3ヵ月後には戻ってるやろう、ぐらいの感覚のときで。312日にO-WESTの追加公演があったんですけど、それができなくて。その23日前ぐらいに横山が曲を書いて。ああいうタイムリーなのは感情的に書けたけど、そっから先が難しかった。  
 
――不思議ですよね。時間があったらそれだけ曲は作れるでしょ?と思うけど。逆に。  
 
秋月:うん。だから日々、人と喋ったりとかちょっとした刺激がないと、書けないというか。
健太:あのとき、メンバーそれぞれがどう思ってるかわからないところもあったからな。
秋月:正直、ちょっとケンカじゃないけど、バチバチになることもあって。ほんまに数ヵ月前は、俺らライブハウスでまだツアーをやってて。「よっしゃこれから!」っていう感じやったのに、コロナになって、23ヵ月経った5月ぐらいからギクシャクしまくり。  
 
――どうして、ケンカになってしまうんですか?  
 
健太:喋るようになったんちゃう? その……コロナ以前に喋らなかったことを。そこでバチバチしたっていう。
秋月:たぶん着地点は一緒やったりするんですけど。なんかまあ……不安があるじゃないですか。でも、全員が全員、「この先、何やりたい?」みたいなところでは、武道館だとか、もう1回幕張をやりたい、みたいな認識はあるんですけど。  
 
――それ以前に「いまどうするか」をちゃんと考えなくちゃいけなかった。  
 
横山:うん。言葉の表現が正しいかはわからないんですけど、それでよかったと思うんですよ。コロナがなかったら、誰もが悩まず、なあなあに生きてたんですよね。それは俺らだけじゃなくて。全部が1回ふるいにかけられたじゃないですか。やめていったひと、死んでいったひと、たくさんいるわけで。でも、そのときに、じゃあ続けていこうかって決めたから、いまここに4人いるわけだから。  
 
――去年の312日に「感エロフェチズム vol.1」が中止になったときに、コメントを発表して。そのなかで「我我感覚ピエロは解しません」って書いてたじゃないですか。いま考えると、よくあのタイミングで言い切りましたよね。  
 
横山:いや、でもブラフなところもありますよ。
秋月:言い聞かせる的なね。
横山:そうそう、それぞれがどう思ってるかは、いったん脇に置いておいて、このタイミングでライブに行きたいと思ってた人たちに対して、「俺らは解散しないから、またライブに来てな」っていうことが、たぶん当時言える精一杯だったんだろうなっていう。「ここでやめてたまるか」っていう気持ちが、自分のなかになかったら出てこない言葉ではありましたね。  
 
――滝口くんはどうですか? コロナ禍で考えていたこと、というと。
 
滝口:なんて言うんですかね、音楽だったり、ベースを弾くことをやめる気はさらさらなかったので。動けなくなって、何週間もメンバーと会わない時間ができて、初めて気づいたこともあったけど。だからと言って、騒いだってどうしようもできないじゃないですか。僕らは曲をリリースするしかできないし。さっきの「我慢」っていう話じゃないですけど。(世の中が)「できますよ」っていうときに、バーンと発信できるものを、どれだけ準備できるかやなって思ってましたね。
 

いまもまだ状況は何も変わっていない

 
――いまは多少ライブも増えてきましたし、活動の心持ちは変わってますよね?
 
横山:そりゃ、去年の時点と比べると、全然違うでしょうね。行政的にもライブはしていいよっていうことになってるわけだし、そこで自分たちもツアーを打ててるわけだし。微かな光が見えてるっていうのはある。直近でライブがなかったとしても、週 1くらいはスタジオに入ろうよっていう会話が起こるってことも、やっぱり去年とは全然状況は違ってるけど。
秋月:少しはまあ晴れたというか。
健太:ただ現実はそうじゃないな ……
秋月:これは俺ら独特ですけど、先が見えんすぎて、考えることがめっちゃ多いんですよね。いま何を削ればいいのかとか、逆に何をいっぱいやったほうがいいのかとか。それがムズすぎる。今年に入って、ライブはできるんですけど、正直なところ、ライブをしたとてっていうところもあって。キャパは半分やし、対バンしてもお互い苦しいし。気晴らしにはなるんですけど、何も改善してなくて。これがどこまで続くのかがまだ見えないので。ムズいっちゃムズいですね。
健太:音楽に対するモチベーション的にはいい感じなんですけどね。それに比べて、現実がついてけえへんっていうか。
 
―― 12年先が見えない悶々としたところは何も変わってない?
 
秋月:うん。だからこういうことはあんまり言うべきじゃないかもしれないですけど。本当のことを言うと、音楽ってまだまだ救われてないというか。やりにくい状況にあることは変わりない。もちろん大変なのは音楽だけじゃないんでね。来てくれるお客さんも命をはって来てくれてるので。
健太:そうそうそう。
秋月:本当にそのぶん感謝やし、僕らもやれることをやりたいですけど。なかなか全国ツアーを組むかっていうのは。現実的なことを言うと、難しいところがありますね。
滝口:「来てくれ」とかね、言われますけどね。それは嬉しいけどね。
秋月:そうね。俺らも来てほしいけど、反面、「頼むで」みたいな感じですね。
 
 

ライブで生身の人間に伝えたい想い

 
――コロナになってからは、無観客ライブ、有観客ライブ、それぞれ経験してきましたけど、そのなかで、ライブに向き合う気持ちの変化はありましたか?
 
横山:ひとことで言うと、有観客のほうが楽しい。
秋月:間違いない、うん。
横山:俺らの曲はフィクションじゃなくて。生身の人間に対して、「こうやって俺たちも生きてくから、生きてこうぜ」っていうテーマで歌ってるわけですよ。それって、目の前に生身の人間がいるのといないのとじゃ、こっち側の想いの度量も違うんです。っていうことも、無観客をやってなかったときには比較できなかったけど、やってみたからこそ、やっぱり有観客のほうが楽しいよねっていうのは思いますよね。
秋月:お客さんがいないっていうのは、俺らがライブハウスで散々経験してたことなんですよ。あの現状が嫌やから、がんばってきた。ただ、良く言えば、配信は配信のメリットがあると思うんです。遠方の方とか体が悪くて行けないとか。そういう人が映像で手軽に見られる。とかはいいなと思うので。お互いの良いさがあるけど、絶対に生には勝てない臨場感もある。それをね、見る側のほうで選べばいいと思うんです。
 
――健太くんはどうですか? 新しいかたちのライブを経験してみて。
 
健太:やっぱり有観客のほうがやりやすいですよね。こないだも(下北沢)シャングリラ( 20205月、 7日)でやったんですけど。声を出してないのに、「出てるんちゃうかな?」っていうぐらいの熱気があって、やっぱりロックバンドいいなって思いました。
秋月:そうね、最後、ゲラゲラ笑いながら、「あれ? おっぱい言うてなかった?」って。俺らも幻聴が聞こえるぐらい盛り上がらせてもらった。みんなに救われたというか。
健太:だから、声出さんでもあれぐらい持っていけんのやなって思いましたね。
 
――滝口くんは?
 
滝口:僕、コロナになって、ライブで緊張するようになっちゃったんですよ。いままでお客さんも含めて、ライブを作ってきた感覚があったので。「あ、この 4人しかおらんのか」ってなったときに、改めて「シャキっとせなあかんな」みたいな。有観客がいいのか、無観客がいいかは、君らが判断してって感じやけど。有観客の場合は、みんなと作りたいな、その空気をっていうのは思いましたね。
健太:かっこええな。
 
――このあいだ、 Rhythmic Toy World主催の対バン(「 MEET TOUR719 渋谷 WWW X公演)で感エロを見たんですけど。すごく良かった。
 
横山:それはどういう意味で?
 
――ちゃんとバンドからの矢印がお客さんのほうに向いてたんですよね。自分の想いだけを吐露するとか、そういうことじゃなくて。
 
横山:それもさっきの話とすごいつながってると思うんですよ。要は、お客さんがパンパンでバーンってやって楽しかったときって、乱暴な言い方をすると、こっちがどう向き合っていようと、たとえば、「 OPPAI」をやったら、ワーッてなるんです。そこで慢心しちゃう自分があった。でも、いまの状況はそうならないから、自分たちがどういう球を投げたら、ここにいるお客さんが喜んでくれるだろうって、いままで考えてなかった隙間に球を投げるようになったんですね。いま、「俺、北海道から出てきてさ」みたいな話をしたところで、いやいやいや、そんなことを聞きたいときじゃない。
 
――そういう MCの時代もありましたからね。
 
横山:そうそう。俺は、このインタビューはずっといま一貫してると思うんだけど、世界中がこういう状況になったときに、結局、生きるって何なのか、自分にとっての幸せって何なのかを、それぞれが再確認しなきゃいけなくなったと思うんですね。だから、俺らが 4人でステージに立ったときにも、生きるってこういうことだろ、幸せってこういうことだろって突きつけるタイミングだってすごく感じる。
 
――そういうことを言えるのは、横山くんのフロントマンとしての成長と言っていいのかな。変化というか。
 
横山:いや、成長だと思います。
健太:あんときの MC、よかったよな。リズミックのとき。あの日から良くなった気がする、俺は。
横山:そうなの!? 
健太:うん、俺は。
横山:あのときって久々に対バンが続いてたんだよ。アルカラとかリズミックとか。対バンって燃えるんだよね。
秋月:せやな。横ちゃんって俺のなかでは、ワンマンよりか対バンをやっていったほうが良かったりする説があって。バンドって、やっぱり対バンをして、いろいろなバンドと切磋琢磨して変わっていくじゃないですか。それが久々に出た。
横山:これもね、乱暴な言い方なんですけど、いまはどんな手段を使っても俺らがいちばんになるっていう視点なんですよね。たとえば、対バン相手をヨイショしてしまうかたちもあるじゃないですか。それは嘘じゃないし、本当に出てくれてありがとう、みたいな。
滝口:呼んでくれて、ありがとう的な。
横山:そう、お互いに切磋琢磨していこうっていうボトムがあるんですけど、そのうえに積み重ねるのがヨイショなのか、バチバチのバトルというか。ボクシングなのか ……
秋月:ボクシング(笑)。
横山:もう殺してやるよっていう(笑)。そこはコロナがなかったら、思わなかった。みんなが必死な状況だから。出る杭にならなきゃダメだって。「もうこいつらとは対バンをしたくねえ」って思われるぐらいの気持ちでやることが、この状況で対バンをやる人たちへの礼儀なのかもしれないなっていうのがあったりする。お互いに傷舐め合ってじゃなくてね。
秋月:そういうところは横ちゃんの反骨心ですよね。
健太:リスペクトものっかってたよな。ただただ潰したるだけじゃなくて。
滝口:結局、そういうスタンスのほうが、ライブを終えたときに、いい握手ができる。
横山:それって俺だけじゃないんですよ。さっき「フロントマンとして」っていう言い方をしてくれたんですけど。結局、 4人が同じ視点に向いてるから。スタジオで練習してるときの空気もあるじゃないですか。なんぼ俺がこうやっていこうかなって思ってたとしても、バンドのなかにちょっと違う空気が流れてたら、感覚ピエロっていう単位ではやりにくかったりする。でも、その感じる空気が同じだから。俺がステージに上がったときに、言葉としてそれが表に出せるわけだし。
 

逃げ道を立つ覚悟を綴った「再生」という曲

 
――コロナ以降に発表された楽曲に、横山くんの作詞作曲率が高いのは偶然ですか?
 
横山:偶然ですね(笑)。
秋月:僕が書けなかったんですよ、正直。書く気もなくて。もう横ちゃんに任せよう、ぐらいのスタンスでおったので。僕らの初期っていうのは、横ちゃんが 99分書いてくれてたので。あの感覚ピエロ像みたいなものをっていうのは、1個あったのかもです。基本的には横山が書くほうがいいと思ってるし。去年、俺が書いた曲はないもんな。
横山:えっとね、「 your answer」の歌詞とか。
秋月:そうか、歌詞とかは一緒に書かせてもらったりしました。「シェケナベイベ」もあったか。
横山:これ、何気ない会話をしてるときに、「あ、なるほど」って合点がいくことがあったんですけど。こないだ、アキレス健太が入院して。人と会わない1週間に初めて孤独を味わったらしいんですね。で、孤独いけるか、いけないか、みたいな話になったんですよ。
 
――あー、なるほど。
 
横山:俺とぐっちー(滝口)は、そもそも引きこもりだから孤独いけるっていう話になって、ここふたり(秋月と健太)は、やっぱり人と喋りたいっていう。
 
――パブリックイメージとズレてないですね。
 
一同:あははは!
健太:気持ちいいぐらいそのまま。
秋月:まんまや。お客さんも絶対わかってる。
横山:ものをつくる人って、そこの何気ないボトムなんですよ、きっと。(秋月が)「曲ができない」って言ったのは、人と会わなかったし、人と喋らなかったからで。でも、俺は会わなくても書ける。これって、どっちが優れてるかの問題じゃなくて。その人の物事を捉える尺度の問題ですよね。実際人と会えるような状況になっときに、(秋月から)こういう曲(「 HIBANA」)が生まれるわけだから。それで届く場所も違うし。去年、俺が作ったものが多かったのは、そもそも人と会わないことに対してダメージがないから。っていうだけなんです。
 
――今年 4月に発表した横山くん作詞作曲の「再生」もすごく良い曲でした。
 
横山:あれは、今年、バチクソ病んだんですよ。
 
――それで生まれた曲だったんですか。
 
横山:病んだ理由っていうのは、やっぱり活動ができないと、自分のなかでぐらぐらしちゃうんですよね。でも、感覚ピエロをやめるっていう選択肢はないよなっていうところから話がスタートするんですよ。だったら続けてくしかないし。自分がどうしなきゃいけないのかなっていうことを、いろいろ考えちゃうわけじゃないですか。引きこもりだから。
秋月:(笑)。
横山:それで考えたときに、結局、俺だなと思ったんです。とりあえず人に嫌われてもいいじゃん。そもそも誰かと仲良くなりたくて、このバンドを組んだわけじゃねえじゃん、みたいなことをもう1回取り戻して、いまこのタイミングで、俺は再生しますよって言い切っちゃうことで、逃げ道をなくそうとしたんですよね。
 
――じゃあ、「再生」は自分のために書いた?
 
横山:うん、あれは自分のためだけですね。だから出してスッキリした。
 
――病んでいた気持ちも解消されたんですか?
 
横山:うーん、まあ、お守りみたいなものになりましたね。
秋月:お守り好きやなあ。
横山:うん(笑)。
 

HIBANA」を、2021年のかたちにする

 
――ちょっと前振りが長くなっちゃったんですけど。ようやく「 HIBANA」の話になります。
 
横山:ここに至るまでの話が大事でしたからね。  
 
――実はタイアップ(『テイルズ オブ アライズ』)オープニングテーマ)の話は 3年前にあって、そのときに書き下ろした曲だったそうですね。
 
秋月:実は幕張の前ぐらいに決まっていて。 2018年ぐらいに書きはじめてました。
 
――バンドの文脈で言うと、ファーストアルバム『色色人色』の頃ですか?
 
秋月:『色色人色』が終わって ……
滝口「ARATA - ANATA 」とか?
秋月:「落書ペイジ」とか「金求 -king-」とか、あのへんを書いたときですね。当時、ハーフ尺はフィックスしてたんですけど。予期せぬコロナがあって、(ゲームの発売が)延期になって、延期になって、いまに至るっていう。
 
――バンドって生き物じゃないですか。だから、 3年前のモードで作ったものって、いまの自分たちで出すのはちょっと違うなっていうのはありませんでしたか?
 
横山:いい質問(笑)! そういうのがあったから、ゲームバージョンではピアノを入れてたけど、フル尺ではそういう肉付けを削ぎ落して、自分たちの楽器だけでレイヤーしようってことになって。
秋月:最初のハーフ尺は横ちゃんと一緒に作曲をしたんですけど、正直ちょっとね、この年に出しますっていうときに好きになれんくて。好きになれんっていうか、いまの感覚ピエロはこれですっていうのが ……
横山:フィットしなかったんだよね。
秋月:自分でアレンジしておきながら、すごい失礼な話なんですけど。この曲、本当に最近までフル尺を書けなかったんですよ。メンバー全員でオケを作ったりもしたんですけど、結局作り切れなくてな。
健太:そうそうそう。
滝口:みんなで聴き直して、「これでいく?」みたいな話もあったけど、肝心の秋月琢登が納得してないんですよ。で、結局、家でガーッて弾き語って、これでいきたいっていうのを送ってきて。
秋月:書こうとしてたことは 2018年の段階からあったんですけど。あれの続きをもう1回書くのにすごい時間かかったというか。いまと気持ちが違いすぎたんですよね。あのときの僕はコロナを知らんから。まだ悠々としてる。だから、ゲーム尺とは歌詞も変わってるんです。嘘をつきたくなくて、いまの気持ちをイチから書いたっていう感じですね。
 
 

ロックバンドとは何か

 
――歌詞の話はあとで詳しく聞くんですけど。まず、サウンドとしては爽やかだな、と思いました。
 
秋月:「感染源」とか「再生」と比べるとね。
 
――いまの自分たちのかたちにするうえでいちばん意識したのはどういうことだったんですか?
 
横山:嘘をつかないことですね。レコーディングで一切直さなかったんですよ。ふつうは直すんですよ。バスドラ一発ですらメトロノームきっかりに合わせたりするんだけど。そういうものすら直さなかったから、よれてるところもある。でもそこに人間が叩いてる感じが残ってるんです。全部の楽器そうですね。あと、爽やかに聴こえるっていうのも嘘をつかないってことなんですよ。この曲を作った人が頭のなかで見えてる世界を、嘘をつかずにレイヤーされているから。
秋月:昔から僕が書く曲って爽やかなんですよね、感覚ピエロのなかで。「拝啓、いつかの君へ」やったり、「一瞬も一生もすべて私なんだ」やったり。
 
――キャッチーでもあるし。
 
秋月:そういうのを書くので。ハーフ尺のときはもっとキラキラしてたけど、それよりはロックというか。俺ら 4人で鳴らせる音で完結できるような方向でいこうかっていうのは喋りましたね。
 
――リズム隊に関しては、どんなふうにこの曲に向き合いましたか?  
 
健太:ドラムは、壊れそうなぐらいにパワフルに叩いてますね。「拝啓~」もそうですけど、俺らはやり方次第で爽やかな曲でもめちゃめちゃロックに聴かせられるなと思ってたんですよ。そういう意味で、勢いを出したいなと思って、バチバチにやりました。いままでのレコーディングは、ばっちり合わせることを重視して、変な言い方をしたら、売りもんを作ってる感覚やったんです。でも今回は、「もっとパワフルに」とか、「若い感じで叩いてくれ」とか。抽象的な感じで言い合えるようになって。それで、がっちりひとつに固まった音源ができたかなと思います。
 
――「若い感じ」って言われて叩くのは難しくないですか?
 
横山: 9年間バンドをやってると、楽器を弾くことに関して変なプロ意識が出てくるんですよ。スタジオに入って、いまからさもちゃんとレコーディングをしますよっていう空間に身を置いたときに、プロっぽく演奏しなきゃいけないんだ、みたいになる。でも、バンドって、別にそうじゃない。はじめたときって、自分が上手い下手よりも、メトロノームに合っていようが合ってなかろうが、俺はもうこうやって叩くんだ、弾くんだっていうエネルギーに満ち溢れてたはずだから。その気持ちになり切ってくれって言って。あの感じが出てきたのは、すごい良いなと思いました。
 
――ベスト盤のソロインタビューのときに、健太くんって、一時期、より精密なドラムを叩きたいっていう考えに向かったっていう話をしてたじゃないですか。
 
健太:それが、めっちゃ苦痛だったんですよ。ドラムが面白くなくなってたんです、ぶっちゃけ。俺はパッションだけで叩きたいていう、そっち派なんですよね。だから、「 HIBANA」のレコーディングのときに、「若く叩いて」って言ったのは滝口なんですけど。
滝口:そう、このあと言おうと思ってた。
健太:それがめっちゃ面白かったんです。
滝口:「 HIBANA」のドラムを叩いてる健ちゃん、好きなんですよ。見てて面白い。ドラムを叩いてるというより、しばいてる感じがして。このがたいですごいしばいてたら、迫力があるんです。
秋月:たしかに。めちゃめちゃ叩いてるもんな、この曲な。
横山:いまはスタジオでレコーディングしてる人のほうが稀なんですよ。パソコンでひとりで作れるし、メトロノームからズレないドラムもできるんです。でも人間にしかできない面白味って、そこじゃないじゃないですか。その人が持ってるリズムで、「ここで盛り上がるぞ、よっしゃ!」っていうときの感情の動きはパソコンには出せないから。それをやらなきゃ、バンドの価値ってないよねって。
 
――最近はネット発の音楽が流行ってるし、打ち込みの曲も増えてきたけど、そういうなかで、なぜ、ロックバンドをやるのか、というひとつの答えにもなっていますよね。
 
横山:そのとおりだと思います。もちろん打ち込みでやってる音楽も否定するわけじゃないですよ。
秋月:かっこいいしね、あれはあれで。
横山:いまどき、ギターがバーンって鳴ってる音楽も少ないわけですよ。余計な音を削ぎ落してっていうほうに向かってるなかで、あえてロックバンドをやる意味って、やっぱり、ロックバンドであることを、全面に押し出した潔さって大事だと思うから。昔は「 CHALLENGER」みたいな曲もあったし、それもかっこいいけど、いまこのタイミングで思ってることって、メインストリームに迎合していくことではなく、ロックバンドってこういうものだよねって、胸はって突きつけることなんですよね。
 
――なるほど。滝口くん、ベースに関してはどんなことを考えながら弾きましたか?
 
滝口:まず、 1テイク目を弾いたときに、横山に「おじさん、ねちっこいんだよ」って言われて。
一同:あはははは!
横山:うまいこと弾こうとしてる感じがしたんです(笑)。
滝口: 2テイク目を弾いて、「悪くないんだけど、余裕あるね」って。で、 3テイク目で、何を言われたか忘れたんですけど、それでライブをイメージしたんですよね。
秋月:そこのキーワード大事やんか。覚えとってくれよ!
滝口:「ライブのときはもっと楽しそうに弾いてる」みたいに言われたのかな。
 
――ああ、滝口くんはやんちゃな感じがするもんね、ライブの動きを見てると。
 
滝口:僕のなかで、ドラムに対してのっかる感覚でベースを弾くのと、ドラムとクリックに対して、自分がいるべきところを計って弾いてるときがあるんですけど。その 3テイク目で、健ちゃんに完全にのっかったんですよね。健ちゃんが思いっきり腕をあげて、シンバルを叩くなっていうときに一緒にアタックも強めにして。そしたら、あ、これこれ、みたいな感じになったので。実際、プレイバックしたときに、「俺、これでいいの?」って言ったもんな?
横山:言った言った。何が「これでいいの?」だよ。おっさん!
一同:あはははは!
秋月:大御所プロデューサー(笑)。
滝口:粗くない?大丈夫?って思ったけど、みんながこれがいいって言ってて。
 
――いままでの自分だったら、オッケーしなかった?
 
滝口:絶対オッケーしなかったです。俺個人のジャッジだったら全然没でしたね。
 
――それがオッケーになるのがロックバンドなんですよね。
 
滝口:俺は丁寧に弾こうと思ってるんですよ。
秋月:でも、丁寧に正しく弾くのが別にバンドの正解じゃないっていうね。それがいいよね。
健太:うん、いい。
秋月:かっこいい音源って、きれいなやつもあれば、荒々しいからこそかっこいい、みたいなのもあるんですよね。ニルヴァーナみたいなのって、弾くのはめっちゃ簡単なんですよ。でも、あれってコピバンとかしても、あの感じが出えへんじゃん。ああいう空気感を真空パックするのがレコーディングの本質なんですよね。特にロックバンドは。
 

いちばん大切なのは「嘘をつかないこと」

 
――改めて歌詞についても聞かせてください。まずは「テイルズ」との親和性を考えつつ、そこから膨らませていったということですよね。
 
秋月:この曲を書いた理由の発端は「テイルズ」なので、もちろん、そこを踏まえながら書きました。ああいうロールプレイングの冒険みたいなところ、仲間意識とか、そういうところを重ね合わせながら作った感じですね。
 
――「火花」というモチーフはどんなふうに出てきたんですか?
 
秋月:言葉としては「摩擦」のほうが、最初に僕のなかで入ってきて。メンバーとか、バンドって、ひとりじゃできないんですよね。横山と健ちゃんと滝口がいないと成立しない。みたいなのが、僕のなかで「摩擦」やなって。「テイルズ」も、仲間がいて、主人公だけじゃなし得ないっていうのが、僕のなかにハマってて。そこから「火花」につながって書き出したんです。でも、2018年には続きは書けなくて。書いたのは今年の8月ぐらいですかね。
 
――書けるようになった糸口はあったんですか?
 
秋月:糸口……正直、僕、今年、感覚ピエロに対して、フラついてる瞬間があって。ちょっと休もうかな、みたいな。感覚ピエロを続けるのに迷ったときがあったんです。それをふわっとメンバーに喋ったりしてたんですよ。そしたら、横山がね、「タクティさんを休ませましょか」みたいに、ぼそっと言ったことがあって。俺、それだけですっきりしちゃって。それのあと、わりとスラスラいけたというか。
 
――「休んでいい」っていう言葉だけでうれしかったんですかね。
 
秋月:うんうん。実はあのとき、俺、横で若干泣きそうやってん。
横山:あ、そうなの? それは知らなかった。
秋月:けっこう限界のギリギリやったんですけど。そういうときに、メンバーおってのバンドやしっていうのがあって。それきっかけで書ましたね。やし、書かなってなりました。
 
――この曲、一人称が<僕ら>じゃないですか。それはバンドのことなのか、同じ時代を生きているリスナーを指すのか、いろいろ想像できるなと思ったんだけど、原点はバンドだったんですね。
 
秋月:そうですね。そう、横山が「再生」を書いたのと同じように、どっちかと言うと、「HIBANA」は、僕らに対して作った曲っていう。だからね、2018年にこれが出てたら、ちょっと変わってたなって。結果論ですけど、今年リリースできるのも1周まわってよかったよなって思います。
横山:俺、2021年の活動のいちばん良いところだって思うのが、全部、点じゃなくて線でつながってることなんですよ。「再生」と「HIBANA」って書いてることが全然違うんだけど、思ってることは近しいんです。要するに「再生」はヘヴィな路線で、いまこういう状況があって、次にどうするかっていうことを歌ってるし、この「HIBANA」もそうだし。なんかね、感覚ピエロの曲の三本柱をひとことで言うんだったら、公開セクハラと社会風刺と自己啓発なんですよ。
 
――端的に言うとね(笑)
 
横山:っていうなかで、いままで秋月琢登が書いてた歌詞って、自分に向いてたんですよ、すべてが。それは社長だっていうのもあるし。バンドとは違う視点があったんですけど。それがバンドになったのが画期的なんですよね。バンドをどうやって転がさないといけないのかっていうとこを歌詞にしたときに、メンバーと火花を散らして、摩擦を生まして、8年前にこのメンバーだったら、かっこいいことができるだろうっていう、あのときの摩擦をいまここで飛び散らかしてやっていこうぜっていうテーマが出てきた。それは「再生」とも遠からずなんです。思ってることは、もうバンドなんかやめてやる、じゃなくて、どうやって大きくしていくかっていう葛藤ですよね。こっから感覚ピエロがどうやって歩んでいくかを強い姿勢で出せた。1個のお守りのような感じがしてますね。
健太:出た、お守り(笑)!
横山:(笑)。俺、この曲は本当に大事だと思うんですよ。さっき、「爽やか」って言ってくれたのが、すげえ良い正解だと思ってて。それが秋月琢登の人柄だから。ダークな感じが出てくると、嘘なんです。いまの感覚ピエロは嘘をついてないものを世に出すていうのが必要なんですよね。
 
――話を聞いてると、「再生」と「HIBANA」の対比って、かなり面白いですね。
 
横山:そこに人間味が見えるんですよね。このバンドのメインソングライターふたりの人間性が。
秋月:対象的な、な。
 
――コロナ禍に横山くんの作詞作曲した楽曲が続いたから、今後はそういう方向になるのかなと思ったけど、きっとそういうことでもないんでしょうね。
 
横山:そこはバランスのとり方だと思ってて。どっちかっていう極端なほうにいくんじゃなくて。俺に黒と赤の絵の具しかなかったら、青い絵は描けないけど、(秋月が)青の絵の具を持ってるなら、青い絵を書けるじゃん、みたいな。そういうのも含めて、こっから感覚ピエロがどうなるかがすごく楽しみです。「HIBANA」は、この先、ありきの歌詞だと思うし。
秋月:歌詞については、あんまり言いたくないけど、1個だけ言うと、俺のなかで、<まだまだ火花>っていうのが大事だったんですよ。
 
――うん、この曲はそのフレーズで終わるのがすごく良い。
 
秋月:俺らは、まだまだ火花っていうことなんですよね。

 

「interview A - feeling -」

感覚ピエロ interview voice - 48:31 A:[ 前編 -コロナ禍での活動と心境- ]
 

「interview B - friction -」

感覚ピエロ interview voice - 39:11  B:[ 後編 - HIBANA 制作秘話 - ]